■ 背景
本件は、長期修繕計画の見直し依頼をきっかけに、当事務所の関与が始まった案件です。 当初、管理会社より屋上防水改修の提案がありましたが、現地を確認する中で、建物全体の状況を把握する必要があると考えました。拙速に個別工事へ進むのではなく、建物と敷地を含めた全体像を把握したうえで判断すべきと考えました。 本業務は福岡市の長期修繕計画作成助成制度を活用し、交付決定を受けています。
■ 事業推進
現地確認の過程で、建設時に大規模な宅地造成が行われていることを把握しました。建物本体に緊急を要する劣化性状は認められませんでしたが、一部擁壁に変位および斜めひび割れが確認され、専門調査会社による詳細調査を実施しました。
■ 技術的検証
調査の結果、最大約150mmの変位、排水機能の不足、施工時の一部不備等が確認されました。施工会社からは不備を認める回答があり、変位が収束しているか進行しているかを確認するため、定点観測による継続検証を行う方針となりました。2024年3月に予備調査を実施し、以降複数回の定点調査を実施しています。全4回の調査で明確な進行が確認されなかったのは幸いでした。
■ 本案件の特徴
第1回から第3回までの調査費用は管理組合の負担で実施しましたが、第4回以降は施工会社が負担する体制となりました。本件は、擁壁の構造的リスクを客観的に可視化し、関係者間の協議を通じて継続的な監視体制を構築した事例です。